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ハカランダの花に思う
出会いとは別れの入り口です。誰であれ出会った限り、いつかは必ず別れなければなりません。それは避け難い現実です。けれども別れを通して初めて出会う、そんな世界もあるのではないでしょうか。

5年前の今頃、私は南米を旅行していました。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスまで行った時、縁あってアルゼンチン唯一の真宗寺院、ブエノスアイレス本願寺教会と出会いました。まるで日本にいるかのような居心地の良さに、気が付けばなんと40日間居候していました。

40日居る間に多くの方と知り合いましたが、取り分け親しくさせていただいたおばあさんがいます。広島の可部から移民された方で、異国という環境が同郷であることの親しみを深めたのか、ある意味家族以上の付き合いをさせていただいたように思います。貧乏旅行をしている私のことを気遣って家の夕食に招いて下さったり、息子さんにガイドになるように頼んで下さったり…。とにかく、なんのお返しも出来ぬこんな私をとても可愛がってくださいました。もし広島で知り合っていたら、これほど親しくはなれなかったでしょう。

40日は瞬く間に過ぎ、アルゼンチンを離れる時が来ました。その別れ際、おばあさんは私に手紙をくださり、それにはこう書いてありました。

「大ちゃん、良きご縁におあいできてよかった。本当に40日間お寺にお参りするのが楽しかった。ありがとうね。又、お逢いする日を楽しみにしています。達者で元気でね」

人間として、僧侶として成長し、おばあさんに再びあいたい。もう1度アルゼンチンに戻らなければ。そんな思いが帰国後の私に力を与えてくれました。

2年後、念願叶いアルゼンチンを再訪することが出来ました。そして私は、おばあさんのお骨が納められてある本願寺教会の納骨堂にお参りをしました。おばあさんは私が帰国した後、間もなく亡くなられたそうです。

今の私を見たら褒めてくれるだろうか。喜んでくれるだろうか。そんな問いが頭に浮かび、私の話を聞いてくださっていた時の優しい笑顔が思い出されました。

私はおばあさんと再会出来なかったことを今でも残念に思います。けれど手を合わせお念仏するとき、お寺で一緒にお参りしていたときの光景がよみがえります。そこにはお念仏のはたらきにより、おばあさんと再会を果たせている世界があると言えるのではないでしょうか。どの縁が欠けていても出会うことが出来なかったと思うと、しみじみありがたく思えます。

もうじき桜の季節が来ます。アルゼンチンの春にはハカランダという紫色の花が咲きます。名を聞いて「儚い(はかない)」という言葉を連想しましたが、実際一夜にして散ってしまう風情は桜の花のように儚くもあります。その花が咲く頃、もう1度アルゼンチンを訪ねようと思います。人のいのちも花のように儚く、また2つとして同じものはありません。一寸先さえ見えない人生で、よきご縁におあいできたことを今は喜んでいます。


これは本願寺広島別院から月刊で発行されている『見真』の3月号に寄稿した文章です。

【関連リンク】
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by na1jp | 2005-06-23 12:52 | ハカランダの花に思う
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